この絵本は恋人がいる男性に読んで欲しいな。

 真実の愛って何だろう。そんな素朴な疑問に応えてくれるラブストーリーで世界中の人々に愛され続ける、時代と国境を超えたベストセラー。原題は『The Rabbits’ Wedding』。

 この絵本には思い出があります。友人の結婚式でこの絵本の朗読を頼まれました。この物語のピュアな魂は披露宴に出席した人にも感動を与えました。

 
 午前中、洗濯をしたり掃除をする内に気がつくと正午になっていた。たくさんの洗濯ものが春の風に吹かれているのを見ると何となく気持ちが良い。

 ふいに「春」が聴きたくなってヴィヴァルディの協奏曲「四季」をかけてみた。

 植物も音楽を聴くらしいので、部屋の中にある観葉植物のパキラの緑色が心なしか普段よりみずみずしく感じた。久しぶりに、たっぷりと水をあげる。パキラも「春」を楽しんでいるみたいだ。 
 文章は軽い。けれど歌人のみずみずしい感性も生きている。

「ある日、カルカッタ」はそんな紀行文だ。もちろん短歌も詠みこまれている。歌だけでは伝えきれない何か、言葉だけでは伝えきれない何かがあって、この二つが調和している。

 読み終えて、何だか無性に旅をしたくなった。

ISBN:4101413215 文庫 俵 万智 新潮社 ¥400
 与謝野晶子の「みだれ髪」を読んで、ほとんど意味がわからず呆然とした。
 しばらくして翻訳歌集「チョコレート語訳 みだれ髪」のあとがきに俵万智が「半分も意味がわからない(二十歳の頃)」と書いてあるのを読んで正直ほっとした。
 俵万智の歌を通じてようやく与謝野晶子の歌の意味がおぼろげながら見えてきた。二人の歌から学ぶことは多い。

 

ISBN:4309012280 単行本 与謝野 晶子 河出書房新社 ¥1,000
 唯一の正しい知恵は、人類から遥か遠く離れた大いなる孤独の中に住んでおり、人は苦しみを通じてのみそこに辿り着くことができる。

 この本の中で紹介されているカリブエスキモーのシャーマンの言葉である。厳しい自然と向き合って生きる人々の深く美しい哲学である。

ISBN:4418965289 単行本 星野 道夫 世界文化社 ¥2,718

旅をする木

2004年3月7日 星野道夫
 ある日、ナショナル・ジオグラフィック・マガジンのカメラマン、ジョージ・モーブリイからカリブーの季節移動の情報を求めて星野道夫に会いたいという電話が入った。

 ジョージ・モーブリイとは昨日、日記にも書いた古本屋で見つけたアラスカの写真集のあのカメラマンである。星野道夫の作品はすべてノンフェクションなのだが本当に「事実は小説よりも奇なり」とは、このことだと思った。

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しばらくカリブーの話をした後、ぼくは古い写真集をとりだし、これまでのいきさつを彼に話し始めていた。ジョージはじっとぼくを見つめながら耳を傾けてくれた。それが嬉しかった。
「そうか・・・私の写真が君の人生を変えてしまったんだね・・・」
「いや、そういうわけではないんですが・・・大きなきっかけとなりました」
「で、後悔しているかい?」

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何て数奇に満ちた人生なんだろう。星野道夫の人生は小説を読むより面白い。そして何より雄大なアラスカの大自然に向ける眼差しの深さに引き込まれる。いつか私もアラスカを旅してみたい。遥かな夢である。

ISBN:4167515024 文庫 星野 道夫 文芸春秋 ¥448
 どうしてこんなに心魅かれるのか、わからぬ人がいる。星野道夫もそんな一人である。そして、この文庫本の表紙の写真を見るたびに、どうしてもうこの世にいないのか、いまも不思議でならない。

 風のような物語は、彼が高校生の時に古本屋で一冊のアラスカの写真集を見つけ、その中に小さなエスキモーの村の空撮写真があったことから始まった。

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どうしてこんな荒涼とした場所に人間の生活があるのかと、写真の持つ背景に心を奪われていった。この村を訪ねてみたいと思った。写真のキャプションにShishmarefと書いてある。地図の中にその文字を見つけた。しかし訪ねようにも方法がわからない。手紙を書こうにも住所がわからない。辞書でmayorという単語を見つけた。“代表者”・・・きっと村長のような意味だ。これでいこう。

Mayor
Shishmaref
Alaska U.S.A

 それから半年がたち、何の返事もないまま、僕は手紙を出したことさえ忘れかけていた。ある日、家のポストに、外国郵便の封筒が落とされた。

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星野道夫は19歳の夏をシュシュマレフ村で過ごした。それから18年後に再びシュシュマレフを訪れた時にその時の手紙を見せられる。

 人の人生とは本当に不思議だ。わたしの平凡に過ぎてゆく時間の中で彼の存在は風のようだった。古本屋で見つけた写真集が彼の運命を変えた。ただの偶然と呼ぶには、あまりにスケールの大きな話だ。

 たったあれだけの住所できちんと村長の手に届き、返事が来てアラスカでエスキモーの村でひと夏を暮らしたのだ。やがて慶応大学を卒業後、写真家を目指し動物写真家の田中光常氏の助手を務めた後、アラスカ大学に留学。その後、写真家として活躍した。

 こんな人生もあるのだと知れば知るほど驚いた。これは偶然の繋がりなのだろうか?いや、偶然ではない。こうなるように運命の糸が張り巡らされていたように思える。そして今、彼の写真と言葉に出会っているのも偶然なのだろうか?

 偶然ではない。きっとこれも運命なのだ。彼の文章はわたしが失なった大切なものを取り戻してくれた。最後に星野道夫の言葉で今日の日記を結びたい。

「自然に対する興味の行きつく果ては、自分自身の生命、生きていることの不思議さに他ならないからだ。」

ISBN:4094111913 文庫 星野 道夫 小学館 ¥800

森へ

2004年3月5日 星野道夫
 「森へ」は南アラスカからカナダにかけて広がる原生林の世界を案内している科学絵本である。(小学高学年以降のお子さん対象。もちろん大人にもお薦めです。)

 写真家でもあり、エッセイストでもある星野道夫はアラスカ大学の野生動物管理部に4年間留学した。その後、アラスカを拠点として様々な動植物の写真を撮り続けた。

 この写真では(おそらく光の加減でこうなったのでしょう。)茶色がかった樹木のように思われるかも知れませんが、実際は樹の幹までも覆いつくす苔のために深い鮮やかな緑色をしている。

 この世界を宮崎駿の「もののけ姫」のアニメでも見た。美しい樹海の写真に星野道夫の森への畏怖と深い愛が注がれている。

ISBN:4834012271 単行本 星野 道夫 福音館書店 ¥1,300

My Items

2004年3月4日 星野道夫
 プロフィールを見たら「My Items」がついていてびっくり!DiaryNoteさん、次々に新しい機能を開発中ですね。最初はとまどいもあったけど、何となく楽しんでいる自分がいます。

 例えば、こんな形で星野道夫さんを紹介できるなんて夢にも思いませんでした。自分のサイトだと著作権とか、いろいろな問題があって写真などは、まず無理です。

 写真家の星野道夫さんがどんな写真を撮っておられたのか、絵本の表紙を通じて見ていただけると思うと、それだけで幸せです。(どれだけ言葉をつくして語っても、こればかりは百聞は一見にしかず、ですものね。)
 この絵本は作者の星野道夫が亡くなった翌年、1996年に第6回けんぶち絵本の里大賞びばからす賞を受賞した。

 絵本といっても内容は小さな子ども向けではない。小学中学年以降のお子さん向けの良書である。また写真がとても美しいので贈り物には最適の一冊かも知れない。

 写真家としての星野道夫は「ナショナル・ジオグラフィック」をはじめとする海外、国内の著名雑誌に写真を発表した。それだけで充分、有名なのだが、星野道夫の才能はエッセイストとしても開花した。

 星野道夫の作品を通して知れば知るほど若くして亡くなったことが惜しまれ、またオーロラのような美しさを秘めた珠玉のエッセイに心を奪われずにはおれない。

 写真集は思いの他、高価である。けれど絵本なら安く手に入り、星野道夫の心の声を聞くこともできる。

ISBN:4097270605 大型本 星野 道夫 小学館 ¥1,460

クマよ

2004年3月2日 美しきもの
 熊を愛し、その熊によって命を絶たれた写真家の最後の絵本である。この絵本は一編の詩のような美しさがある。星野道夫のどこまでも透明で星の瞬きのような魂が静かに眠っている一冊である。

ISBN:4834016382 単行本 星野 道夫 福音館書店 ¥1,300

「星野道夫さんに捧げる歌」

写真にはあなたがのぞく風景が時空を超えて息をしている

つかの間の極北の夏謳歌する熊の親子を君は捕らえる

ファインダーのぞいて見てるその瞳、何を思いて何を求めて

求めてる幼い頃に探してた美しきもの、いまここにある

広がりを心に抱く意識こそ生きていくのに必要なもの

君の字を初めて見たよ、どうしよう、涙あふれて止まらなくなる

君の血はアラスカの地に還りゆく愛が与えし運命(さだめ)のままに

君のことエンヤの曲を聴きながら書き綴ってた星の降る夜

偶然と呼べない出合い繋がりて君の心に触れている我
 原作者のハラーは同名の本の中で、その大半を自然描写についやしている。しかし原作の本と映画では多少、ストーリーが異なる。でも、それが気にならないほど、ヒマラヤ山脈の美しさには胸をうたれるものがあった。山を愛する人にはお薦めの映画である。

DVD パイオニアLDC 1998/11/25 ¥5,300

 オーストリアの世界的登山家ハラーは、世界最高峰の制覇を目指してヒマラヤ山脈へと向かった。チベットへたどり着いた彼は、そこで若きダライ・ラマの教師となって、激動のチベットで7年をすごす。登山家としての名誉と夢だけを追い続けていたハラーは、自らを再発見する、魂の再生の旅を体験することになる。
 ブックカバーの写真は同名の映画で主演を演じたブラッド・ピットである。

 第二次世界大戦の頃、オーストリアの登山家ハインリヒ・ハラーはインドにいた。そこで戦争捕虜となるが、収容所を脱走しチベットの高原を彷徨いラサに到着した。

 ハラーはそこでダライ・ラマと運命的な出会いをする。彼の家庭教師をつとめるが、やがて中国のチベット侵攻が始まった。その時の体験を本に記したのが「セブン・イヤーズ・イン・チベット」である。いまはもうチベットという国はない。

 ダライ・ラマ14世はノーベル平和賞を受賞するが、チベットという国がどういう国だったのか、チベットの人々がどんな民族で、またチベット密教がどんな宗教だったのか、一番最初に世界の人々に知らせたのが、この書である。

 冒頭にダライ・ラマはメッセージを寄せている。

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 何があろうと変わらないことが、本当の友情の証です。いちど心を許しあえば、友情を保ちつづけ、残りの人生のあいだずっと、助けあうのです。ハラーは、そんなふうにずっとチベットの友人であり続けています。彼が私たちの願いに力を貸してくれたもっとも大切なことは、「セブン・イヤーズ・イン・チベット」という本を通じて、たくさんの人々に私の国を紹介してくれたことです。彼はいまなお、チベットの人々の権利と自由のために尽力してくれていて、私たちはそのことにとても感謝しています。

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 この書は、ハラーのチベットという国と民族に対する深い愛を感じる。彼はチベット密教に帰依することはなかった。あくまで客観的で誇張のない冷静な表現を貫いていて共感を覚えた。それ故にハラーの「人類愛」を深く感じる。国と国ではなく、民族と民族でもなく、宗教と宗教でもなく、人と人が様々なことを超えて理解しあい愛し合うことができるのだという一つの証に思える。

ISBN:4042770010 文庫 福田 宏年 角川書店 ¥940
 「波乱万丈」というテレビ番組は、その名の通りゲストの波乱万丈の人生を放送している。この番組に米良美一さんが出演していた。彼は「もののけ姫」の主題歌を歌ったことで有名だ。そして世界でも数少ないカウンターテナーのひとりである。

 そんな誰でも知っている程度のことしか知らなかったが、実に個性的な人物で親しみをおぼえた。特に声を失った四年間を経て「それまで思いやりの足りない人間だった」と告白するシーンは良かった。有名になると、つい驕りの気持ちが頭を持ち上げるが、そんな所は微塵もなかった。

 考えると、米良美一さんが一時期あまりにもてはやされていて逆に興味を失っていたことに気がついた。機会があったら、じっくりと聴いてみたい。
 心とは不思議である。「陽炎(かげろう)稲妻(いなずま)水の月」という言葉があって手に取ることのできないものの例えだが、心もまた触れることが出来ないないばかりか、目にみえるものでもない。
 金子みすゞの詩に「星とたんぽぽ」という名詩がある。その詩の一部をご紹介しよう。

『星とたんぽぽ』

青いお空の底ふかく、
海の小石のそのように、
夜がくるまで沈んでる、
昼のお星は眼にみえぬ。
   見えぬけれどもあるんだよ。
   見えぬものでもあるんだよ。

 この詩を読んで、真昼の星はまるで心のようだと思った。見えぬけれどもある。見えぬものでもある。それは心でしか感じ取ることのできないものではないだろうか?この詩が読み手に投げかけているものは、心の目で人や物事や宇宙を見つめることの大切さではないだろうか。
 
 例えば無限という言葉を知っていても言葉で説明するのは難しい。それなら、あわせ鏡はどうだろうか?鏡に映る自分が持つ鏡のなかに自分がいて、その自分が持つ鏡に自分がいて無限に果てしなく続く。人の心もまた無限の広がりを持っている。

 いま宇宙は光よりも速い速度で空間自体が膨張、つまりふくらみ続けている。天体望遠鏡で観測して出てきたデータは事実でも実際には想像してみるしかない。宇宙の膨張も真昼の星も心の目でしかとらえることができない。でも、それは未知への扉を開く力にもなる。

ISBN:489456386X 文庫 金子 みすゞ 角川春樹事務所 ¥580
 いま気がついたことだけど、この日記は一日で複数の日記が書ける。そしてプロフィールの質問は自分で書き直すこともできる。自分で質問して自分で答えるのだから単なる自問自答になってしまいますが、それでも良いと思う人にはお薦めします。

 初めて「カラー設定」が登場した時には苦労しました。色番号を入力して確認すると、とんでもない色の組み合わせになっている。できるだけ読みやすい配色になるよう頑張ったけれど、頑張った後で配色が複製できるらしい事に気がつく。ちょっとショックだった。

 でも、もし、わたしの日記の配色を気に入った方がいたら、自由に複製して下さってもかまいません。できれば「HOME」にある掲示板にメッセージを残して下されば嬉しいな。

 どうも本や映画の批評を書こうとすると自分でも知らず知らずのうちに固くなっている気がする。女性と書いてあるのに、どうも女性とは思えぬ文体です。もっと軽いノリで楽しく書いたら見に来てくれる人も増えるかもしれないけど、この日記はわたしの文章修行の場でもあるので、いたしかたありません。

 それに「レビュー選択」で映画や本などの画像をUPする機能がついてからは、視覚で訴える効果に感動してしまいました。まるで雑誌に投稿するような気分になれるじゃないですか。

 しかしプロフィールにも書いてある通り、読者を意識していないのが、この日記の欠点で、こうやって自分の都合を告白するのも良くないかも知れないね。でも本来、日記というのは自分が自分に語りかけるものなのだから、これからは、複数の日記を気の向くまま書くことも可能です。

 無料の日記サイトは複数あるけれど、やはりDiaryNoteの新しい機能は面白い。例えばわたしの本や映画や音楽などの文章を読んで「あ、面白そうだな」って探してくれたりする人がひとりでもいると、すごく嬉しいな。

 これからも炭酸水の泡のような、つぶやきを吐き続けるのだろうけど、儚く消え去る運命の言葉を日夜一生懸命綴りつける自分、そうせずにはいられない自分がいて、最近では、それを「どうして」とか「何のために」とか思わなくなってきました。

 わたしは書きたいから書いているだけだし、それを共感して欲しいという願いを読み手には抱いていません。ものを書く人の中で「共感して欲しい」と願う人がいます。実はわたしも、そういう時期がありました。詩を書いたり、短歌を詠んだりすると時には感想を寄せてくださる人もいます。

 ところが、自分(作者)の思いとは全然違っていることがあります。でも、誰かの詩や文章を読んで生まれてくるイメージはその人のものですよね。作者としては読み手の心の中に新たな何か(興味や感動など)が生まれたら、もう、それだけで充分なんです。「ありがとう」って思わなくちゃいけない。それ以上を望んではいけない。

 また自分と異なる考えの人と時にはトラブルが起こることもあります。しかし「正しさは人の数だけある」ので何が正しいのか何が間違っているのかは、究極的には個人の価値観が善・悪を決めるのでしょうね。何かを誰かと争うつもりで文章を書いている訳ではないので、勝手に文章を転載したり議論を始めたりするのはご遠慮下さいね。

 何だか、随分、脱線してしまいましたが、書きながら新しい発見が生まれるという経験をしたことがありませんか?例えば、女性の方で誰かに自分の思いを語りながら、本当の自分の気持ちに気がついたとか・・・わたしは、よくそんな事があります。詩を書いたり短歌を詠んだり、文章を綴ったりすると、いままで見えていなかった自分に気がつく、そんな発見があるんです。

 今になってようやく気がついたことですね。 
 人間の尊さと愚かさの二極を描いた映画の前に言葉は失われる。「戦場のピアニスト」は千の言葉より万の言葉より価値がある。

 戦争というものがどういうものか、わたしたちは歴史の教科書や書物で学ぶだけになっているのではないだろうか。

 どんなに戦争を正当化しても、人と人が殺しあうという現実は変わらない。その最中にあって人間らしさを失わずに戦える兵士はどれだけ、いるのだろう。

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DVD アミューズソフト販売 2003/08/22 ¥3,800

 2002年のカンヌ映画祭においてパルムドールに輝いた『戦場のピアニスト』は、ロマン・ポランスキー監督が指揮することを運命づけられた映画である。幼少時代をナチス占領下のポーランドで過ごしたポランスキー監督こそが、ユダヤ系ポーランド人のピアニスト、ウワディスワフ・シュピルマン(エイドリアン・ブロディ)の自伝を映画化するにふさわしい人物といえる。

アメリ

2004年2月27日 心に残る映画
 本国フランスでは、公開されるやいなや1週間で120万人を動員した「アメリ」は日本で公開されてからも話題の映画だった。この映画を見逃したのを後悔している。「アメリ」は何度でも見たくなる映画だ。

 ハリウッド映画を見慣れてきたので、フランス人の感性には新鮮さを覚えた。それに思わずうっとりとしてしまうエッセンスが加味されている。

 「デリカテッセン」や「ロスト・チルドレン」「エイリアン4」の監督であるジャン・ピエール・ジュネが、明るくて前向きな映画を作ったことがないことに気付き、チャレンジするつもりで製作したという映画である。

 ストーリーはジグソーパズルを仕上げるような感じがある。ひとつひとつのピースは意味を持たないけれど、それらが繋がると美しい絵ができあがる・・・最後のピースはもちろんアメリの恋心・・・すべては幸せという名のもとに収束していく。

 音楽はヤン・ティルセンというフランスでは「サントラの神様 」と評されている人とのこと。モンマルトルという映画の舞台にぴったりな繊細なメロディだった。

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DVD ビデオメーカー 2002/08/02 ¥4,700

 モンマルトルの街で夢見がちに生きる若い女性の軽やかな日常を描いた、ポップなヒロイン・ムービー。22歳のアメリ(オドレイ・トトゥ)は、ある日“他人を幸福にする喜び”に目覚めて密かな悪戯にひたっていく。

陰陽師 (1)

2004年2月26日 読み終えて
 「陰陽師」の一番の良さは、怨霊、魑魅魍魎にいたるまで、恐ろしさというよりは、哀れさに深い理解をよせている所かも知れない。

 また、この漫画の魅力の一つは平安時代の陰陽道や古神道に触れていることである。空海によって真言密教がもたらされてから、日本人の世界観は徐々に変化してきた。晴明の物語はそれ以前の日本人の心の世界を知る手がかりがある。この時代以降は仏教への関心が深まり、日本人の宇宙観は仏教に色濃く支配されていくように思う。

 岡野さん自身、第2巻朱雀の後書きに京都文化博物館の藤本孝一さんから国史大系、絵巻の本を高野山の和田健二郎さんからは陰陽道、真言密教、古神道の資料などを借りており、その他にも雅楽や衣装など多くの人の協力を得ており、感謝の言葉を綴られている。

 この物語のほとんどは幻想だが、人物などは実在の人が多い。「源氏物語」を読んでみてもわかる通り、平安時代、人々は共有する幻想の中で生きていたとも言える。現代は科学が発達して自然界の現象のほとんどが解明されようとしている。また何かわからないことがあると、それを科学で証明しようとする。

 しかし、証明できないことがあるのも事実で、それらは迷信であるとか古い風習として非科学的な認識で見られている。けれど人の心は不思議なもので非科学的で理解不能な世界に対する憧れもある。

ISBN:4592132114 コミック 岡野玲子の「陰陽師」原作 夢枕 獏 白泉社 ¥771
 エンヤはアイルランドの北、ドゴニール州グウイドー出身です。伝統音楽とクラッシック、そして最新の録音テクノロジー駆使した、エンヤならではの幾重にも幾重にも重なり合った独特な音は、まるで水の波紋のように世界に広がりました。

 彼女の素顔を垣間見たとき、何故か、わたしは日本人であることを強く意識しました。

 エンヤは映画「地球交響曲第1番」に出演しています。自主上映でしか目にすることのできない映画ですが、日本全国のどこかで上映され続けている人気のある作品です。

 第1番は4部構成になっていて、映画の一番最後にエンヤが登場します。ケルト美術研究家の鶴岡真弓が案内人になり、彼女の故郷アイルランド北端の小さな村を出発点に、アイルランドの自然とケルト遺跡を訪れる旅が映されていました。

 エンヤのメロディはアイルランドの古代ケルト民族の魂をも引き継いだ遥かな時の流れをあわせ持っています。それが聴くものの心を無意識にゆさぶるのかもしれません。

 しかし、実はそれは私たちも例外ではありません。どこかに日本人として、心の奥深くで目を覚ますことなく眠っている何かがあるのです。

Enya CD Reprise 1997/11/11 ¥2,035

Orinoco Flow
Caribbean Blue
Book of Days
Anywhere Is
Only If...
Celts
China Roses
Shepherd Moons
Ebudae
Storms in Africa
Watermark
Paint the Sky With Stars
Marble Halls
On My Way Home
Memory of Trees
Boadicea

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