何かのきっかけで新しい世界の扉が開かれることがある。わたしを歌の世界に誘ったのは、やはり俵万智だと思う。
彼女の歌集、著作物はたくさんあるけれど、その中でも『短歌をよむ』(岩波新書)は、短歌の入門書として優れている。この書の「はじめに」には、こう記されている。
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万葉の時代、千年以上も前から歌いつづけられてきた、短歌という詩形。短歌の世界を知ることは、千年の旅をするということだ。と同時に、自分自身の「今」を見つめることでもある。
短歌には、二つの「よむ」がある。千年の旅は、短歌を「読む」、そして自分自身を見つめることは、短歌を「詠む」。
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俵は『短歌をよむ』の中で多くの歌人の素晴らしい歌を取り上げている。その中で村木道彦の作品に彼女同様、わたしもすっかりハマってしまった。
ふかづめの手をポケットにづんといれ みづのしたたるやうなゆふぐれ
するだろう、ぼくをすてたるものがたりマシュマロくちにほおばりながら
この感性は、あまりに眩(まばゆ)く何か遠く手の届かないものを感じさせたが、同時に、この歌を読むことで歌を詠んでみたいと思ったのも事実である。
もともと詩を書き続けていたわたしは、短歌を定型詩と考えるようになった。俳句のような季語等の決まりごとがなく、ただ五七五七七と言葉を並べるだけで良いからだ。
それに新しい短歌の世界を築いた俵万智のおかげで、それまでになかった親しみやすさが生まれていた。彼女の作品が短歌界に及ぼした影響は並々ならぬものがあると思う。
こうしてわたしは、歌を読み、そして詠むようになった訳である。今日は久しぶりに拙い歌を詠んでみた。
時空超え出逢う人との運命の不思議を想う星見上げつつ
夢野 華
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