旅人―ある物理学者の回想
2004年2月9日 読み終えて
一冊の本との出逢いは、時空を超えた人(作者)との出逢いなのかも知れない。そういう意味で本を読むことは、それを生み出した人の心の宇宙に触れ、自分の心と重ね合わせ、新たな宇宙を生み出すことのようにも思われる。
『旅人』は湯川秀樹(角川文庫¥420)の自伝である。ふと興味を覚えて、手にとって序文を読んでみました。思いがけず美しい文章だったので、すぐにレジに足を運んで買ったのを覚えている。
「未知の世界を探求する人々は、地図を持たない旅行者である。地図は探求の結果として、できるのである。目的地がどこにあるか、まだわからない。もちろん、目的地に向かっての真っ直ぐな道など、できてはいない。」
この書で一番、印象に残っている文章で、『旅人』では湯川は物理学やその研究について、あまり多くを語らず、むしろ人間の孤独さを淡々と綴っているようにも感じられる。
鎌倉やかしこのはざまここの谷深くも人は思い入りつつ
この歌は哲学者、西田幾太郎先生を鎌倉に訪れた時のことを思いだして詠んだ歌で、最初、湯川が短歌に親しんでいたことに意外な気持ちを覚えた。
けれど、人が「地図を持たない旅行者である」と語る湯川の人生観に思いを馳せると、素直にうなずけるものがある。この本を読み終えて、一人の人間の心の深遠に触れたようにも感じた。
『旅人』は湯川秀樹(角川文庫¥420)の自伝である。ふと興味を覚えて、手にとって序文を読んでみました。思いがけず美しい文章だったので、すぐにレジに足を運んで買ったのを覚えている。
「未知の世界を探求する人々は、地図を持たない旅行者である。地図は探求の結果として、できるのである。目的地がどこにあるか、まだわからない。もちろん、目的地に向かっての真っ直ぐな道など、できてはいない。」
この書で一番、印象に残っている文章で、『旅人』では湯川は物理学やその研究について、あまり多くを語らず、むしろ人間の孤独さを淡々と綴っているようにも感じられる。
鎌倉やかしこのはざまここの谷深くも人は思い入りつつ
この歌は哲学者、西田幾太郎先生を鎌倉に訪れた時のことを思いだして詠んだ歌で、最初、湯川が短歌に親しんでいたことに意外な気持ちを覚えた。
けれど、人が「地図を持たない旅行者である」と語る湯川の人生観に思いを馳せると、素直にうなずけるものがある。この本を読み終えて、一人の人間の心の深遠に触れたようにも感じた。
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