『リトル・トリー』フォレスト・カーター(作)和田 穹男(訳 )めるくまーる(出版)

久方ぶりの感動だった。それも心の底の底からの。
山から噴き出す清冽な湧水に身体から心まで洗われた気がした。
読み終わってすぐさま電話をとり出版社に電話して二十部注文した。
愛する人々に配りたかったからだ。
                              倉本 聡

 この本の赤い本の帯に書かれている倉本氏の言葉は裏切らない。この書の序文で“『リトル・トリー』を分かち合う喜び”を記した南イリノイ大学のレナード・ストリックランドも

 『リトル・トリー』との最初の出会いを思い出すたびに胸が熱くなる。ひとたびこの本を読んでしまうと、もはやもとの自分に引きかえすことはむずかしく、世界を今までと同じ目で見ることはできなくなってしまうからだろう。

と、記している。

第一回全米書店業協会ABBY賞受賞作品

全国学校図書館協議会選定図書

日本図書館協会選定図書

厚生省中央福祉審議会推薦文化財

 数々の賞に輝く名作だが、この哀愁の漂う物語は、不思議なほど哀しさを覚えない。哀しさを覚えぬというより透明な空気のように広がって、いつしか胸の痛みは和らいでしまう。

 主人公、リトル・トリーは全てをあるがままに受け止めて生きることを学ぶ。それゆえに哀しさは哀しさでなく昇華され、むしろ太陽の光のように美しい輝きを放っている。

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