陰陽師 (1)

2004年2月26日 読み終えて
 「陰陽師」の一番の良さは、怨霊、魑魅魍魎にいたるまで、恐ろしさというよりは、哀れさに深い理解をよせている所かも知れない。

 また、この漫画の魅力の一つは平安時代の陰陽道や古神道に触れていることである。空海によって真言密教がもたらされてから、日本人の世界観は徐々に変化してきた。晴明の物語はそれ以前の日本人の心の世界を知る手がかりがある。この時代以降は仏教への関心が深まり、日本人の宇宙観は仏教に色濃く支配されていくように思う。

 岡野さん自身、第2巻朱雀の後書きに京都文化博物館の藤本孝一さんから国史大系、絵巻の本を高野山の和田健二郎さんからは陰陽道、真言密教、古神道の資料などを借りており、その他にも雅楽や衣装など多くの人の協力を得ており、感謝の言葉を綴られている。

 この物語のほとんどは幻想だが、人物などは実在の人が多い。「源氏物語」を読んでみてもわかる通り、平安時代、人々は共有する幻想の中で生きていたとも言える。現代は科学が発達して自然界の現象のほとんどが解明されようとしている。また何かわからないことがあると、それを科学で証明しようとする。

 しかし、証明できないことがあるのも事実で、それらは迷信であるとか古い風習として非科学的な認識で見られている。けれど人の心は不思議なもので非科学的で理解不能な世界に対する憧れもある。

ISBN:4592132114 コミック 岡野玲子の「陰陽師」原作 夢枕 獏 白泉社 ¥771

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