読み終わって「どうして、こんなタイトルにしたのか」と考えてみた。単に、たくさんの人間模様に例えてみたかったのかも知れない。実際にこのタイトルに関連してくるのは枇杷の木くらいだ。
 
 江國 香織の小説はいつも非日常的な傾向がある。しかし、小説というものは、そうあらねば、ならないのだろう。読者は平凡で退屈な毎日にウンザリしている(少なくとも私は)ので突拍子も無い話をまるで週刊誌を読むように悦ぶものだ。

 けれど、実際は眉をひそめてしまいそうな物語を蛹(さなぎ)から羽化する蝶のように美しくしてしまう江國さんの言葉の魔術に逆らう術はない。何故なら、もう一度、時間を経て、読み直しても良いなという、めったにない気分にさせてくれるからである。

 ところで、江國 さんの亡くなったお父様は俳人であったらしい。(麦秋さん、掲示板に情報、ありがとうございます)。俳人、江國氏の俳句というものを私は一度も読んだことがないのだが、「血は争えぬ」という言葉が浮かんできた。他にも、小説家、吉本ばななは、かの有名な、思想家、吉本隆明の娘である。感性というものも遺伝するのかも知れない。 

ISBN:4087475859 文庫 江國 香織 集英社 2003/06 ¥680

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