加藤諦三先生の本で、これほど赤裸々な本もないと思う。自分自身、特に父親との親子関係を述懐している。おまえはダメな人間だというイメージを与えられ、責められながら、他方で最高の存在であることを要求されたと、きっぱりと語っている。

 「私がいつまでも成長できないことによって、親は私への一体感を持ち続けようとしたのだろう。また父は、男としての自信喪失から、私が社会的に成功することを望まなかった。」

 世の中にこういう親は、たくさんいると思う。そういう親の犠牲となった子どもは、屈折した人との関わりを持つようになるのかも知れない。

 人に迷惑をかけて喜ぶ人というのは、そういう事でしか、自己主張できないのかも知れない。現実を見ないで、自分の心の底の無意識の憎しみや不信感で他人に反応しているのかもしれない。そういう人は多いと思う。

 この本の最後の方に、加藤先生にカリフォルニア大学のバークレイ校の教授になる話がやって来た。語学力に自信が持てずにいた先生は

「古いあなたの人生の台本を捨てなさい」

と、言われた。その時、自分自身の否定的な感情に気がつかれた。

 人生の台本を捨てるには、勇気も努力も必要になる。でも、自分にやさしく生きるということは、他人に惑わされたりせず、自分で決断することなのだと、この本は熱く語っている。 

ISBN:4569564992 文庫 加藤 諦三 PHP研究所 1992/10 ¥490

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